2017-01-01から1年間の記事一覧

ハッピーエンドジェイルハウス

良い作品から受けたクリティカル・アタックはその日のうちはずっと引きずり続けるけれど、一度寝て起きてみたらなんだかその損傷が薄っぺらくなってしまっていることが多い。かといってそれでいいかというとそうでもなく、やはり良い作品に触れたときの静か…

神さまがやってきた

日曜日の朝はたいてい気持ちよく晴れているか、もしくはしとしとと雨が降っているものだ。晴れていればとても気分よく起き上がることができるし、一方雨でもまずそれほど悪い気分にはならないことが多い。冬になると偶さか、しんしんと雪が降ることもあるが…

名前はきっとスマイリー

季節が巡り始め、一巡りして、また巡ろうとするまでの話。春から始まり、冬を眺め、また春へ。人はそれに区切りをつけ、一年としている。だけど僕は何年か前のある一年を、一年とはどうしても把えることができずにいる。なぜなら僕の言うその一年のうち、あ…

亡霊

メタフォアにとじこめられたきみを、ちょっとだけでも楽にしてあげたかった。幾層にも重なりあってめちゃくちゃになってしまったきみの世界を、空の高さとか、海のひろがりだとかに馴染ませてやりたい。ぼくはかず少ないこの手で、なにかを握りしめ、なにか…

夏の妖精さん

永遠のような広がりをもって始まった一月半もの夏休みも、残すところ数日となっていた。大学生として迎えた初めてのそれはただ長い長いといっただけで過ぎ、特に目立ったハイライトもないモノトーンのカレンダーは当然のようにだらしなく間延びしている。何…

Center Town

鳩が歩いて、人間も歩いている。トラックが止まり、その脇を原付自転車がすり抜けていく。標識が地面をひたすらに見つめていて、信号の色がパッと変わる。 僕はそれらを白い歩道橋の手すりに寄りかかりながら見るともなく見ている。人と物の動きのコントラス…

キック・オフQ

ひとつのサッカーボールが半分埋まっている。グラウンドの隅の下草のあいだに。時刻は早朝。ところは四丁目のグラウンド。運命的な導きによって、僕はこの時間のこの場所にとりあえず背筋を伸ばして立っている。砂のグラウンドだが砂埃は舞っておらず、あの…

『宝石の国』というインクルージョンについて

最近、宝石の国という作品について考えることが多いです。 (現在の状況は、原作8巻まで、アニメ7話まで) 僕はあまり漫画に詳しい人間ではないので、アニメ化が決まるまでは存在そのものすら知らなかったし、そもそも作品からではなくオープニング曲(ハイ…

アーサー・デントの憂鬱

かりに、宇宙のすべてをその頭ひとつのなかで把えきってしまったとき、ただひとつの惑星に生涯留まって暮らすということは、果たして可能だろうか。「宇宙は広いな〜」と漠然で抽象的な思いが、思弁的論理性を伴ったり伴わなかったりして一時的に、あるいは…

踊りうたうはリリカルあいどる

好きなアイドルがいる。 わけあって、彼女たちの存在は曖昧なところにある。純なアイドルだともいえるし、次元のたが、、が外れたフリークであるかもしれない。でもまあ、なんでもいいや。 さあ、合同ミニライブの幕開けだ。 1.自分REST@RT / 765PRO 2.極上…

パスタ工場とアメリカと爆撃

夜昼となく、空の上をアメリカの戦闘機がごうごうと飛び過ぎる間は、爆弾がふってくるんじゃないかと精神的に少し身構えてしまう。子供の頃、と前置いても良かったのだが、実際今になっても精神的にすこーしだけ身構えてしまうので、そうはしなかった。僕は…

ドーナツ・クッション・クエスチョン(あるいはサバイバル)

ドーナツ・クッションの上にかれこれ三日間ほど座り続けているが、一向に気持ちが固まる気配がない。ワンルーム・サバイバルである。ドーナツ・クッションに座ることで得られる効用は今このさいは脇に置いておくとして、いまはおれ自身の方向的気持ちに向け…

白の街

§白の街 この街は全てが白い。 窓外に見渡す景色は、春霞に支配された王国のような白さだ。家並みの外壁は並べて白塗りで、往来を行く人々はみな白い残像を振りまいている。街道の敷石は鈍く白が浮かび、街灯のポールも白い。夕方の時分時になると一斉に点く…

2017年1月5日に見た夢

眺めているうちに、わかるにつれて、おいおいお話しするつもりですが、謎のままであるべきことは、そのままにしておくしかありません。 ────ジュール・シュペルヴィエル『海に住む少女』 当然と言えば当然なんですけど、僕は現実で実際にピアノが全く弾けな…

貝割れ大根をめぐる冒険

‪ 「人は島嶼にあらず」‬ ‪ 僕がそう控えめな口調で言うと、彼女はレタスと貝割れ大根のサラダにサウザンドアイランド・ドレッシングを垂らす手を止めた。‬ ‪ 「フレンチ・ドレッシングがいいのね?」‬ ‪ 僕はゆっくりと首を振ったが、あるいはそうかもしれ…

スマホが失せただけの話

スマホが失せた。電車で。 どこで無くしたか、どうやって東急に電話するか、番号、わからない、信号待ちをしている、日吉駅前の大きい横断歩道、スマホ無しでは始まらない生活、すべてはスマホから始まる生活。 無くしたというか消えた、忽然と姿を消したと…

顕れるイデア、遷ろうメタファー

見上げたらバーンとオリオン座があって、そこからだんだんレンズを引いていくように、ぽつりぽつりと規則性のない星々が暗闇に灯ってゆく。突堤の先に立つ灯台の光波が回転しながら黒塗りの空を星座ごとに切り裂き、黒のベニヤの片となって僕の頭上にガチャ…