雑文

ダーク・インゲはにこりともしない女だった。

記憶力のいい人間というのはたしかにいて、それもけっこうな数の人間が多くのことを記憶しそれらをいろいろなことに役立てたり、役立てなかったりしている。 それはとてもうらやましいことである。 何かを憶えているということは、そのまま生活のくだらなさ…

ある町の葬儀(あるいは、ある夢の断絶)

1 悲しみをもって 深く不明瞭な翡翠の風を町中がまとい着飾るその日、その刻、それは腹の底にまで届く爆音を皮切りにして突如始まる。 吉能はまだ気がついていない。じっと眠っているためでもあるし、豊かに広がる早朝の喚起的な夢の内で漂っているためでも…

家出したときの話

とくにおもしろいこともなかったのだけれど、ちょっと本棚が目の前にあってその時のことを少しだけ思い返していたらどうしようもなくなってしまったので、書けることだけ書く。 大学4年への進級が確定したとき、けっこう身体というか身体についてくる何もか…

※この映像はイメージムービーです。作品本編では犯罪行為の描写がありますが、犯罪を教唆するものではありません。まねをしないでください。

CARNIVAL OP 1 ゲームのオープニングのよく観返しちゃうものたち。 ・装甲悪鬼村正 装甲悪鬼村正 OP 『 MURAMASA 』 Ver.A 装甲悪鬼村正 OP 『 MURAMASA 』 Ver.B 下のVer.Bはストーリーの根幹にかかわってくるので、絶対にプレイ中にみるか、プレイした人た…

それがあります。ニコチン

9ヵ月経ちました。遍歴でも書く。・ピアニッシモ・アリア・メンソール(1mg/0.1mg)何故たばこを吸おうと思い立ったのか、何も憶えていない。おそらく9ヵ月前のその当時書いていた小説がぐちゃぐちゃになっていて、何かしなくちゃな、とご自慢の逃避を決行…

受け取りたまえ、きみの傘だ

引越しをした。荷解きだとか、家電の搬入だとか、役所への手続きだとか、すべて初めてのことなのに、それを自分がしているという感じがあまりなく、気づけばこうして、バルコニーに干された無印良品の長袖シャツとか電気温水器のなかでポタ、ポタとどこかへ…

明太子と高菜の博多風スパゲティ

最近の本です。ちゃんとやっていく2020。 『動物からの倫理学入門』伊勢田哲治 動物からの倫理学入門 作者:伊勢田 哲治 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会 発売日: 2008/11/20 メディア: 単行本 昨年序章だけちら見してそのまま数キログラムの可燃物のした…

忘年回

この前の年の瀬のある夜のことだけれど、初めてちゃんと「忘年会」という名のついたお酒の会に顔を出してみた。……いや、初めてでもないのかもしれない。そういう、どこで何をした、という類いの記憶が幼少のころからぼんやりとしていて、ああまたボンヤリだ…

『宝石の国』というインクルージョンについて

最近、宝石の国という作品について考えることが多いです。 (現在の状況は、原作8巻まで、アニメ7話まで) 僕はあまり漫画に詳しい人間ではないので、アニメ化が決まるまでは存在そのものすら知らなかったし、そもそも作品からではなくオープニング曲(ハイ…

アーサー・デントの憂鬱

かりに、宇宙のすべてをその頭ひとつのなかで把えきってしまったとき、ただひとつの惑星に生涯留まって暮らすということは、果たして可能だろうか。「宇宙は広いな〜」と漠然で抽象的な思いが、思弁的論理性を伴ったり伴わなかったりして一時的に、あるいは…

踊りうたうはリリカルあいどる

好きなアイドルがいる。 わけあって、彼女たちの存在は曖昧なところにある。純なアイドルだともいえるし、次元のたが、、が外れたフリークであるかもしれない。でもまあ、なんでもいいや。 さあ、合同ミニライブの幕開けだ。 1.自分REST@RT / 765PRO 2.極上…

パスタ工場とアメリカと爆撃

夜昼となく、空の上をアメリカの戦闘機がごうごうと飛び過ぎる間は、爆弾がふってくるんじゃないかと精神的に少し身構えてしまう。子供の頃、と前置いても良かったのだが、実際今になっても精神的にすこーしだけ身構えてしまうので、そうはしなかった。僕は…

ドーナツ・クッション・クエスチョン(あるいはサバイバル)

ドーナツ・クッションの上にかれこれ三日間ほど座り続けているが、一向に気持ちが固まる気配がない。ワンルーム・サバイバルである。ドーナツ・クッションに座ることで得られる効用は今このさいは脇に置いておくとして、いまはおれ自身の方向的気持ちに向け…

2017年1月5日に見た夢

眺めているうちに、わかるにつれて、おいおいお話しするつもりですが、謎のままであるべきことは、そのままにしておくしかありません。 ────ジュール・シュペルヴィエル『海に住む少女』 当然と言えば当然なんですけど、僕は現実で実際にピアノが全く弾けな…

貝割れ大根をめぐる冒険

‪ 「人は島嶼にあらず」‬ ‪ 僕がそう控えめな口調で言うと、彼女はレタスと貝割れ大根のサラダにサウザンドアイランド・ドレッシングを垂らす手を止めた。‬ ‪ 「フレンチ・ドレッシングがいいのね?」‬ ‪ 僕はゆっくりと首を振ったが、あるいはそうかもしれ…

スマホが失せただけの話

スマホが失せた。電車で。 どこで無くしたか、どうやって東急に電話するか、番号、わからない、信号待ちをしている、日吉駅前の大きい横断歩道、スマホ無しでは始まらない生活、すべてはスマホから始まる生活。 無くしたというか消えた、忽然と姿を消したと…

顕れるイデア、遷ろうメタファー

見上げたらバーンとオリオン座があって、そこからだんだんレンズを引いていくように、ぽつりぽつりと規則性のない星々が暗闇に灯ってゆく。突堤の先に立つ灯台の光波が回転しながら黒塗りの空を星座ごとに切り裂き、黒のベニヤの片となって僕の頭上にガチャ…