ハッピーエンドジェイルハウス

ハッピーエンドジェイルハウス

良い作品から受けたクリティカル・アタックはその日のうちはずっと引きずり続けるけれど、一度寝て起きてみたらなんだかその損傷が薄っぺらくなってしまっていることが多い。かといってそれでいいかというとそうでもなく、やはり良い作品に触れたときの静か…

神さまがやってきた

日曜日の朝はたいてい気持ちよく晴れているか、もしくはしとしとと雨が降っているものだ。晴れていればとても気分よく起き上がることができるし、一方雨でもまずそれほど悪い気分にはならないことが多い。冬になると偶さか、しんしんと雪が降ることもあるが…

名前はきっとスマイリー

季節が巡り始め、一巡りして、また巡ろうとするまでの話。春から始まり、冬を眺め、また春へ。人はそれに区切りをつけ、一年としている。だけど僕は何年か前のある一年を、一年とはどうしても把えることができずにいる。なぜなら僕の言うその一年のうち、あ…

亡霊

メタフォアにとじこめられたきみを、ちょっとだけでも楽にしてあげたかった。幾層にも重なりあってめちゃくちゃになってしまったきみの世界を、空の高さとか、海のひろがりだとかに馴染ませてやりたい。ぼくはかず少ないこの手で、なにかを握りしめ、なにか…

夏の妖精さん

永遠のような広がりをもって始まった一月半もの夏休みも、残すところ数日となっていた。大学生として迎えた初めてのそれはただ長い長いといっただけで過ぎ、特に目立ったハイライトもないモノトーンのカレンダーは当然のようにだらしなく間延びしている。何…

Center Town

鳩が歩いて、人間も歩いている。トラックが止まり、その脇を原付自転車がすり抜けていく。標識が地面をひたすらに見つめていて、信号の色がパッと変わる。 僕はそれらを白い歩道橋の手すりに寄りかかりながら見るともなく見ている。人と物の動きのコントラス…

キック・オフQ

ひとつのサッカーボールが半分埋まっている。グラウンドの隅の下草のあいだに。時刻は早朝。ところは四丁目のグラウンド。運命的な導きによって、僕はこの時間のこの場所にとりあえず背筋を伸ばして立っている。砂のグラウンドだが砂埃は舞っておらず、あの…