2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

木の葉が揺れていた

その時、A校舎二階の隅に位置する講義室の窓辺の席から外を、露天の喫煙所にたち込める見えない紫煙を見下ろしていた時、煙の昇っていく方を追っていくと宙で真新しい緑の樹葉が風に揺れていた。水泳プールみたいだと思った。それは、よく日に照ってたゆた…

第十三話(終) さようなら、きくらげ

僕は歩いていた。そして、歩いている、と思った。地面の反撥が靴底につたわってきて、それだけで何だか気持ちが良かった。結局はそれだけで十分なのだ。 オランウータンはあれから無事にしているだろうか、勢いよく町並みに繰り出してしまってなかなか危険な…

第十二話 霧が晴れて登場するもの

涙ぐましい努力もむなしく『さかなクン』は途方に暮れていた。言葉? 魔法? 本質? わけがわからねえよ! 今日は途方に暮れてばっかだな、今日、今日はいつまでつづくんだ・・・・・・ それにしても暑い、霧の奥から太陽の光が、角度のある西日が皮膚を突き抜けて…

第十一話 長く静かなカーブを回る

懸命に両腕を振り地面を蹴って全力疾走していた『さかなクン』であったが、気持ちこころが落ち着いてきたように思ったので一旦そこに止まって後ろを振り返って見た。白く磨かれた石の地面から草いきれのような具合に霧が立ちのぼってきていて視界はよくはな…